n年後に駐在するゲイ

いつか海外に飛ばされるゲイが生きた証

深夜コンビニ

時計の針がてっぺんを過ぎたころにコンビニに行くのが大好きだ。

 

この営みに「深夜コンビニ」という名前を与えている。

 

これは秋が深まったころにするのがいい。

 

秋と冬のにおいが半分ずつになる時分。

 

スウェットに薄手のコートを羽織り、サンダルをつっかけ外に出る。

 

暖かな家の空気から一変、冷たいにおいのする外気が体を包む。秋がゆっくりと、でも確実に遠ざかっているとその時完璧に理解する。

 

家を出た瞬間に感じる非日常感。違う世界に迷い込んでしまったような気持ち。あまりにもスケールの小さいナルニア国物語が始まる。

 

0時を超えるとさすがに人通りはない。黙々とコンビニに向かう。

 

ご近所の家々、こちらを見下ろす電柱、普段自転車で上を通り過ぎているマンホール。

 

時間帯が違うというただそれだけで、いつもの景色がまるで違ったように見える。

 

道路の向こうには人の影一つ見えない。

 

 

 

コンビニに着いても、不思議と現実に戻った感覚に襲われることはない。

 

あそこにはあそこの、独自の仕方で非日常が存在していると思う。

 

照明で異様に明るく照らされた店内に商品が行儀よく陳列されていて、揚げ物やおでんなど様々な食べ物のにおいが入り混じっている。

 

アニメとのコラボイベントのポップに対して抱く、昼間は決して感じないような強烈な違和感。

 

ここには長く入れないなという、謎の直観が頭をよぎる。

 

 

 

その時心に留まった暖かい飲み物を飲みながらもと来た道をたどる。

 

深夜。眠気で頭の働きが徐々に鈍くなる頃に浴びる冷気はどことなく心地がいい。

 

できるだけ長くこの感覚を味わっていたいという気持ちと、早く暖かい布団にもぐりたいという気持ちがせめぎあう。

 

家のドアに手をかけると、取るに足らないナルニア国物語は突如として終わる。

 

そういえば、あの話の結末を僕はよく覚えていない。