n年後に駐在するゲイ

いつか海外に飛ばされるゲイが生きた証

ぼくの好きなもの

脳みそのしわの隙間にこびりついたデブリをとるために、思ったこと頭に浮かんだことをそのまま書こう企画を開催します。
今日のテーマは「ぼくの好きなもの」です。

 

片桐はいりさん
ハマったきっかけは『かもめ食堂』。なんでしょう、あの圧倒的唯一無二の存在感は。『かもめ食堂』ではミドリさんという役で登場しますが、フィンランドの街を自転車で流していても、小林聡美さん演じるサチエさんが淹れてくれたコーヒーを飲んでいても、市場に出かけてトナカイの肉を買おうとするときも、ものすごい濃度で「いる」んですよね。それでいて、作品の雰囲気を壊さない仕方でそこに「いる」。あの感じがなんとも言えず好きなんです。

ちなみにはいりさん、演技はさることながらエッセイがめちゃくちゃ面白い。『かもめ食堂』撮影時に滞在したフィンランドでの体験記をつづった「わたしのマトカ」、グアテマラで現地女性と結婚してそのまま居ついてしまった弟を尋ねた際の出来事が語られている「グアテマラの弟」、はいりさんの血肉を作った映画について縦横無尽に語り尽くす「もぎりよ今夜も有難う」。どれもこれも、あまりの面白さにページをめくる手が止まりません。どれかのエッセイで「朝になる」を「太陽が地平線に手を掛けた頃」と表現していたのには思わず膝を打ってしまいました。どうやったらあんなに素敵な表現が思い浮かぶんだろう。

はいりさんの声も好き。ぶっきらぼうだけど熱い。いつかラジオやポッドキャストをやってほしい。

 

阿佐ヶ谷姉妹

地球上で一番好きな芸人さんです。この4月から2本の冠番組を持つことになり、もはやスター。口のよく回るエリコさんと、おっとりしているように見えて実は一番やばいミホさんの、見てみてハラハラするけどほっこりもするやり取りを見るのがここ最近の癒しです。二人が書いたエッセイはNHKでドラマ化されました。あのドラマもなかなかクオリティが高くてびっくり。エリコさんを木村多江さん、ミホさんを安藤玉恵が演じているのですが、しっかり阿佐ヶ谷姉妹なんですよね。無理に寄せているという感じでもなく、女優さんって本当にすごいんだなと感動しました。

「ほっこり」、「のほほん」の面がクローズアップされがちな二人ですが、ネタもちゃんと面白いんです。「細かすぎて伝わらない」の「○○な人」シリーズとか。「玄関にいる人」はいつ見ても爆笑できます。

忘れてはいけないのが歌。エリコさんは芸能人カラオケバトルで高得点をたたき出したりしていました。漫才にちょこちょこ挟まれる歌がうますぎて、そこでいつも笑っちゃいます。ミホさんも確か音大出てるんですよね。二人でカバーアルバムとか出してくれないかな。ちなみに先ほど紹介した阿佐ヶ谷姉妹のエッセイをもとにしたドラマの主題歌は阿佐ヶ谷姉妹本人が歌っている楽曲です。これがまた渋くていいので聴いてみてください。"Neighborhood Story"というタイトルです。

阿佐ヶ谷姉妹のお二人はかつて六畳一間のアパートで二人暮らしをしていたんですよね。今は同じアパートの隣同士の部屋で暮らしていて、ご飯の時間になるとどちらかがもう片方の家に行って料理をして食べたり、大好きなほうじ茶を飲みながらたわいもないおしゃべりをしたりするそうです。家族とも恋人とも違う、かといって友達というと少し薄い、そんな不思議な関係性の二人が寄り添って幸せに暮らしている光景がなんとも尊い

 

ディストピア小説

好き!と胸を張って言えるほどディストピア小説を読み込んでいるわけではないのですが、有名どころの『すばらしい新世界』(ハクスリー)と『われら』(ザミャーチン)はとても好きな作品です。よくもまあ、こんな世界を思いついたなと、作家の想像力の絶望的な果てしなさに、もはや敬意を覚えるレベル。

昨日ちょうど、光文社古典新訳文庫の企画で『われら』の訳者を迎えたトークショーがオンラインで行われており、無料だったということもあって気楽な気持ちで参加しました。これがまた面白い。この作品もさることながら、ロシア文学には時たま「人間は自由という重みに耐えうる存在であるのか?」という問いが提起されるそうです。『われら』でも「自由だけど不幸になるよりかは、幸福だけど不自由のほうがずっといい」といったセリフが出てきます。ザミャーチンを生み出したロシアという国は、革命を経て人間を機械の歯車かのように管理・監視するソ連という国に様変わりしてしまっていますが、かつての超大国の結末を見る限り、「自由ではあるが不幸」であることと「幸福ではあるが不自由」のどちらがより優れているのかわかってしまう気がします。

 

ムーミン

子どもの頃にドはまりしていたのですが、ここ1年くらいブームが再燃しています。というのも、半年ほど前に埼玉県飯能市にあるムーミンバレーパークに行ったからなのですが。

一見ゆるゆるの子ども向けアニメかと思いきや、登場人物がさらっと真理を吐くところに好感が持てます。自由と孤独を愛する旅人・スナフキンは「だれかを崇拝しすぎると、ほんとうの自由は、得られないんだよ。」という格言を残しています。ムーミンにはこういう格言製造機がちょいちょいいます。ムーミンのお友達のトゥーティッキはこう言います。「ものごとって、みんなとてもあいまいなのよ。だからこそ、わたしは安心していられるんだけどね」僕の魂のレベルでは到底理解できませんが、きっとすごいことを言っているのだと思います。

 

なんだかとても満足したので今日はここまで。