n年後に駐在するゲイ

いつか海外に飛ばされるゲイが生きた証

早すぎる起き

目が覚めたら朝の5時だった。今日も巨大な毒虫になっていないことに安心する。珍しく早起き。いや、早すぎる起き。二度寝するには目が冴えすぎている。巷で流行の、これまでにない規模の乳酸菌が詰まっている飲料を飲んでいるおかげかもしれない。

さて何をしようかと考え始めようとした途端、「早すぎる起きをしたときは、何をすると楽しいだろう」という疑問が浮かんだ。浮かんだ、というよりかは降ってきた。天啓。

眠れないときはコンビニへ行く。早起きをしたときはマダム3人のトークショーを見る(日曜日に限る)。では、早すぎる起きをしたときは?

なお、「早すぎる起き」は朝の4時から6時に目が覚めることを言う。空に明るさが徐々に交じるものの、草や木や大半の経済活動は相変わらず寝ている時間。個人的に、4時前は深夜、6時以降は早朝という感覚がある。

深夜ほどの背徳感も、早朝ほどの無敵感もないけれど、一日の中で一番「現実の色」が薄いのがこの時間帯である気がしている。

例えば、24時間営業の喫茶店(そんな店があるのかは知らないけど)に行って、これから一日を終えようとしている人と話してみたい。

「どんな一日だった?」会話はそんな風にして始まる。その人は深夜の勤務を終えてからその喫茶店に来ていて、僕はその人の仕事の愚痴を聞いてやる。上司が無能だとか、給料が低いとか、通勤に時間がかかるとか。それは大変だね、と相手の言葉の切れ目をうまく見つけて相槌を打つ。でもさ、生きていくためには働くしかないんだよね、もうすでに山盛りになっている灰皿に新たな一本を追加しながら、その人はほとんど独り言のようにつぶやく。本当にそうかな、と思いながらも「そうだね」とうなずく。今度は向こうが「どんな一日にしたい?」と聞いてくる。本が読みたいかな、何かおすすめはない?と聞くと、どうやらその人は本を読まないらしい。ただ、その人は大の音楽好きらしく、最近気に入ってる曲をいくつか教えてくれた。そのどれも、知らない国の知らないアーティストのものだった。

「じゃあまた」「じゃあまた」会話を終えて、その人は店を後にする。それぞれの一日を終えて、始める。僕はうんと濃いコーヒーを飲みながら、薄暗い街をぼーっと眺めて、今日は何をしようかと考える。

 

そんなことを考えていたら、いつの間にか早朝と呼ばれる時間帯に突入していた。窓に目を向けると、暗闇は完全に姿を消していた。