インフルエンザをやらかしました。確か5年ぶり。これまでインフルにかかると39度近い熱が出たものですが、今回は38度を上回らないくらいで、軽症で済みました。当たり前ですが、この三連休は自宅待機でした。楽しみな予定をたくさん詰め込んでいただけに、心へのダメージが大きかったです。
コロナと違って、インフルエンザは適切なタイミングで薬を飲めば一気に症状が改善され、早々に感染前の体調に戻れます。が!!! 発症の翌日から少なくとも5日は自宅待機をしなければいけない(解熱のタイミングが遅れると、その分待機解除日が後ろ倒しになる)ので、結構時間を持て余すんですよね。体は元気なのに外に遊びに行けないのはしんどいですが、そんなことを言っていても何かが変わるわけではないので、買い込んだ本やら、観たい映画やアニメなどをここぞとばかりに消化することにしました。以下に、それぞれの感想をだらだら書きます。
1. 本
(1)『翻訳者への道』(徳岡孝夫, 1989年, ダイヤモンド社)
先日、神保町で開催されていた古本祭りで買った一冊です。筆者は主に英語のノンフィクションを翻訳している方だそうです。本書は本文の言葉を借りれば「翻訳家志望の女性」に向けて書かれており、いい翻訳とは何か、翻訳に必要な素養は何かといった翻訳論から、歴史の変動には実は翻訳がかかわっていたというような話まで、翻訳にまつわるあれこれがわかりやすい日本語で書かれていて、スイスイ読めました。ロシア語通訳の米原万里やイタリア語通訳の田丸公美子のエッセイもそうだけど、言葉のプロの書き物って明快で簡潔だなと思います。
筆者は、正しい翻訳というのは「原文の魂を伝える」ような翻訳で、逆に悪い翻訳というのは「辞書通り」の翻訳だと言います。日本語として意味が成立していることが絶対条件で、日本語母語話者の魂に響くような文を作りなさいと。僕は趣味で翻訳をやっていますが、いつになったらこの境地にたどり着けるのか、見当もつきません。
(2)『ロシア文化事典』(編集代表:沼野充義・望月哲男・池田喜郎, 2019年, 丸善出版)
こちらの本も、前述の古本祭りで買ったものです。歴史、信仰、地理、文学、演劇、学術など、ロシアという国を実に様々な切り口で解説した、おそらく日本で初めてのロシア事典です。一気読みするものではないので、時間のある時に気になったページをつまみ読みしていこうと思います。
現時点で読み終えたもののなかで驚いたのは、ロシアの年金額の低さ。2017年における年金の平均額(月額?)は日本円にして約2万7,000円だそう。あの国はそこまで物価が低いわけではないので、特に都市部の年金受給者がどうやって暮らしているのか本当に謎。
また、ロシア人の伝統的な概念において病気の原因となるものの一つに「祝日など働くべきでないとされる日に働いたこと」があるそうで、笑ってしまいました。それであれば極東の某国は病人だらけだなと。
こういう多様な分野を網羅した本を読むと、自分がどこに興味を持って、どこに興味がないかが浮き彫りになりますね。僕の場合、まず理科系の内容はすっ飛ばします。民衆文化も素通りして、食も丸まるスキップ。食べるのは好きなんですが、文字になると読む気がしない。活字からおいしさは伝わってこないしな、と思ってしまいます。従い、グルメ紀行みたいな本も読んだことがありません。文字情報に依らないコンテンツを言語化することにどれほど意味があるんだろう、と考えてしまいます。クラシックコンサートのパンフに書いてある「この音楽を聴いていると、まるで自分が田園にいるような気持ちに云々」みたいなあれ、いやここはコンサートホールですけど、となってしまいます。僕の感性が貧弱なだけですかね。
話の本筋に戻ると、すすんで読むのは文学や言語、映画などでしょうか。歴史は両者の中間くらい。好き嫌いはよくないなと思いながら、でもこれで何年もやらせてもらっていますので、という気持ちもあります。これからさらに年を取ると、もっと興味の幅が狭まるんだろうか。
(3)『ヒエログリフを書いてみよう読んでみよう 古代エジプト文字への招待』(松本弥, 2000年, 白水社)
これも古本祭り購入本。ヒエログリフ、あの見た目で実は表音文字(文字が音を表す文字)であることがほとんどだそう。これはかなりの衝撃でした。左から書いてもいいし、右から書いてもいい。縦からでも横からでもOKだそうで、とても柔軟な言葉なのですね。また、単語の一番後ろに、その単語の意味を表す「決定詞」なるものを置くのだそうです。こうすることで、同音異義語を区別できるのだとか。しっかり勉強したら博物館がより楽しくなりそう。
(4)『現代東欧幻想小説』(編訳:吉上昭三ほか, 1971年, 白水社)
ポーランド、ルーマニア、ユーゴスラヴィア、チェコスロヴァキア、ハンガリーの短編幻想小説が収められている一冊です。こちらも古本祭りで買いました。古本祭りほんとありがとう。
「幻想」と付くだけあって、どの短編も突飛な内容です。引き出しを開けたら小人がいたり、電柱の代わりに人が立っている世界で、そこでは通信という行いが人間の伝言ゲームに代替されていたり、いもしない女に執心している男が、その女が現れるのを待ち続けたり、などなど。
この手の小説は、無理に意味を見出すものでもないのかなと、読んでいて思いました。著者の突飛な発想や、普通に生きていたら絶対に使わないであろう言い回し、あまりにもユニークすぎる単語と単語の結合、そういったものを楽しむ性質のものかもしれません。
というようなことを考えながら読み進めると、『ロボット』や『山椒魚戦争』で有名なチェコのカレル・チャペックの『足跡』のページに行きつきました。山奥で片方の足の足跡を見つけた二人の男の話です。足跡は一つぽっちで、その足跡の前後には足跡が全くありません。そんな不思議な光景を見た二人はああでもない、こうでもないと議論をします。そのうちに一方の男が、どこから来るわけでもなく、どこへ行くものでもない足跡があることを認めなければならない、と言います。ただそこにあるだけで、そこからは何も出てこず、何者をも救済しないものがある。もう片方の男はそうとは思わず、我々の関知し得ないような規模で、何かと関連していることもありうるのだ、と言います。二人は別れて、そこで話は終わります。
僕なりの幻想小説の楽しみ方はおそらく前者に属するのでしょう。ただ、何かと(無理矢理に見えるかもしれないけれど)関連付けて楽しむのもありなのかなと思いました。
2. 映画
(1)『過去のない男』(アキ・カウリスマキ, 2002年)
フィンランドのカウリスマキ監督の「敗者三部作」の二作目。暴漢に襲われて記憶喪失になった男が、たどり着いた先のホームレス集団居住地域のようなところで、色々な人とかかわりあいながら暮らしていく話。
ホームレスに個人的に家を貸している男がいて、主人公がその男から家を借りる交渉をしているシーンがあります。なかなかの値段を吹っかけてくる家貸し男が「もし家賃を払わなかったら、猛犬に鼻を咬みちぎらせる」と言うと、主人公は何事でもないかのように「俺の影が鼻の分だけ短くなるだけだ」と返すところは、めちゃめちゃしびれました。
友達と『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』をたまたま観たのをきっかけに、ここ2カ月くらいカウリスマキ監督の作品を集中的に観ています。
まずもって、セリフが少ないのがいい。長々とした説明的な映像はどうしても飽きてしまいます。また、役者はそろいもそろって無表情です。そういう演出なのだと思います。真顔でシュールなことをするので、時々笑ってしまいます。無駄なものが極限までそぎ落とされていて、スッと映画の世界に没入できます。
『過去のない男』では、クレイジーケンバンドの『ハワイの夜』がBGMとして使われています。カウリスマキ作品のマッチしすぎていてびっくりしました。まさかフィンランド映画を観ているときに日本語の曲が流れてくるとは。カウリスマキの映画では、フィンランド歌謡曲のようなものがふんだんに使われているのですが、このフィンランドの歌謡曲、日本の歌謡曲とどことなく雰囲気が似ているのですよね。一貫してもの悲しいけれど、憂鬱とまではいかないあの感じ。
そんなカウリスマキ監督の最新作『枯れ葉』が12月15日に日本で公開されます。今から楽しみです。
カンヌ受賞のアキ・カウリスマキ新作。可笑しくも切実な恋物語「枯れ葉」 |キネマ旬報WEB
3. アニメ
(1)『サマータイムレンダ』
和歌山県の島を舞台にしたサスペンスファンタジー的なアニメです。1エピソード終わるたびに「次はどうなるの!?」となり、ほぼ一気見してしまいました。アニメ一気見したの久々だなー。最後に一気見したのはバイオレット・エヴァーガーデンかな。
絵がとても綺麗だった。特に空と海の青がまぶしかった。部屋の中が一瞬夏になったよ。あと朱鷺子ちゃんがぶっちぎりで最高だった。
低くて落ち着いた声→すき
好きな人への想いを胸にしまって、その子のことを優しく見守る→すき
兄に対して沸点低めで、怒ると結構怖い→すき
異形の怪物を両脇に従えて闘う→すき
浴衣がえげつない似合う→すき
朱鷺子ちゃん、どこかの世界線で報われてほしい。
(2)『Dr. STONE』
「ネギ頭がイケメンに見えてくるので観て」と友達におすすめされたので観てみましたが、確かにイケメンに見えました。いかにも少年漫画みたいなセリフ回し多めで背中がゾクゾクしっぱなしでしたが、話はめちゃめちゃ面白い。大樹の声優さん、大声ばっかりで大変だろうな。あと、霊長類最強の高校生って何 笑
4. 動画
『狂ってしまった家庭で起きた衝撃の誘拐事件を題材にしたホラーゲーム「 誘拐事件 」』
狂ってしまった家庭で起きた衝撃の誘拐事件を題材にしたホラーゲーム「 誘拐事件 」 - YouTube
もう3年は観てるゲーム実況者・ポッキーさんの動画。チラズアートさんというホラゲ作家?の最新作「誘拐事件」の実況です。
今回の作品はキャラクターボイスのクオリティが上がってるなと思いました。プロの声優雇ってるのかな。後半のほう、派手な脅かし要素があって、冗談抜きで絶叫しました。ご近所さんごめんなさい。
5. ゲーム
(1)ピクミン4
友達に勧められて体験版をプレイ。オッチンもピクミンもあんなにこき使われてるのに、文句ひとつ言わずにひたむきに働いていて涙が止まりませんでした。製品版、買おうかなどうしようかな。
(2)スーパーマリオUSA
ニンテンドースイッチってファミコン・スーファミ時代のソフトをプレイできるのが嬉しいですよね。ひたすら野菜を引っこ抜いて敵にぶつけました。カギを取ると追いかけてくる仮面に衝突されて3回くらい死んだ。
あのゲーム、スイッチでは任意の地点でセーブができるけど、ファミコン版ではセーブできてたのかな。昔のゲームってあんまりセーブがないイメージ。
最近のマリオってグラフィックすごいけど、個人的には昔の2Dのほうが落ち着きます。